オーキシンの他に、植物の成長を促進させる植物ホルモンに、ジベレリンという植物ホルモンが知られている。このジベレリンの発見の発端は、イネの苗が異常に成長して,丈が高くなりやがて枯れてしまう、馬鹿苗病という病気の研究からであった。
1910年代、当時日本の統治下にあった台湾で、この馬鹿苗病が広範に発生したため、当地の農業試験場では馬鹿苗病について精力な研究がなされた。
そして1926年、農業試験場の技師であった黒沢英一によって、苗の異常な成長はカビの一種(馬鹿苗病菌)が分泌する物質によって起きることが突き止められた。
この報告に興味をもった薮田貞治郎(左写真:当時の東京帝国大学農学部教授)は、科学者として初めてこの研究に取り組み、研究室の住木諭介の協力を得て、1938年、この物質を取り出すことに成功し、原因となった菌の名前ジベレラにちなんで、ジベレリンと名づけた。
ジベレリンの研究は第二次世界大戦後に急激に進展しました。日本の研究に注目したアメリカ・イギリスなどの研究者が、馬鹿苗病原菌の大量培養に成功し、大量のジベレリンを得ることができたからである。
今日では、ジベレリンは植物の体内でもつくられ,植物の伸長を促進させる植物ホルモンであることや、多くの種類があることが明らかになっている。
また、ジベレリンは、受粉せずに果実の成熟を早める作用もあるため、農業分野では、種なしブドウの栽培に利用されており、ジベレリンは同時代に発見されたペニシリンとともに、微生物が有用な生理活性物質をつくることを示した最初の事例であり、その後の生物学の発展にに大きな影響を与えた。